前回レポートしたOutwell スマートエアテント。グランピング・外おうちに必須な、従来型のロッジテント・大型テントの短所をクリアーするだけでなく、そこで生まれた余裕を「スペースの拡張性」や「インテリアの充実」に活かしています。快適に過ごすのに充分すぎる広さを持ちつつも、日本のキャンプ場の規格でも柔軟に対応して設営できて、オプション品を活用することで、大きくも使えるので、非常につぶしの効くテント。今回はテクニカルコットン素材を使ったスマートエアテント「Concorde | コンコード5SATC」の設営レポートです。
はじめに
ポリエステルなどの化学繊維を使ったテントの利点は、布の高い強度をより軽量で細い糸で作れるため、その軽量さと手入れのし易さにあります。対してコットン素材のテントの利点は、コットンならではの透湿性と繊維の間に空気を含むため、「暑い時に中は外より涼しく、寒い時に中は外より暖かい」調温機能を備えています。寒さはストーブやホットカーペットなどの暖房器具を使うことでいくらでもカバーできますが、蒸し暑い季節に関してはコットンは非常に優れています。また、紫外線による布へのダメージも化学繊維よりも強いなど優れた点を持っています。
しかし、コットンならではの幾つかの難点があります。
- テント幕の重量において化学繊維とコットンを比較すると、コットンは約30%ほど重量が重たくなる
- コットンは吸水性が高く、水を吸った後に乾きづらい、これが撤収しづらさとカビの生えやすさになる
- フレームに対する負荷が大きく、従来型のスチールフレームでは、ポールだけで相当な重量を覚悟する必要があり、大人一人ではなかなか設営できない上、風が吹いている時はさらに難易度が上がってしまう
まず、一番最後の「重たいスチールフレーム」「風への対処」に関しては、風に強い地域で使われることを想定して形状がデザインされているアウトウェルのスマートエアテントは、空気を入れて立ち上げるだけのエアチューブをフレームに使うことで、すでに課題をクリアーしています。
コットンの重たさに関しては、アウトウェルでは「Outtex® Airtech | アウトウェル エアテック」という独自開発のテクニカルコットン(TC)方式を採用。コットン65%、ポリエステル35%の混合繊維を使うことで、テント幕の重量を同サイズのコットンテントの約半分まで計量化することに成功しています。また、コットンよりも乾きやすいのでカビづらく、コットンの透湿性と調温性も備えています。
準備
展示用サンプルのスマートエアテント、コンコード5SATCが届いたのが、蒸し暑い季節となる6月。業務の忙しさに追われて、最も暑い7月に初めて設営することになりました。アジア地域におけるキャンプのリサーチを反映して投入されたこのモデル。ヨーロッパの感覚では「トロピカル仕様」となっていますが、それは同時に古き良き時代のコットンテントのイメージも大事にしているということ。配色のベージュとモノトーンで体現しています。
出発前に撮った上の写真の一番右のキャリングバッグに収納されているのが、コンコード5SATCです。トムキャット5SATCよりも前に投入されたモデルなので、スーツケース型のキャリアではありません。従って、何かしらのカートを使う必要があります。
キャンプ場について車から降ろして一式を取り出します。「テント本体」にはインナーテントがセット済みで、さらに「脱着式オーニング」、「玄関マット」、「ペグ一式」が入っています。「ポール」はオーニングと玄関で使う最小限のものと、暑い日の通気性を良くするために、ドアの跳ね上げに使う、オプションポールが付いています。面倒なフレーム用ポールの「集団」は一切無いので、組み立ての煩わしさはありません。
そして当然・・・
エアチューブ・フレームのテントなのでエアポンプです。
しかし、ただのエアポンプではないところが、アウトウェルの偉いところ。押しても引いてもエアが出る「ダブルアクション」で、しかも空気圧が高すぎてチューブにダメージを与えないように空気圧ゲージもついています。
このゲージで7psi (0.5気圧)までエアを注入することになっています。ゲージのバルブが緩んでいると正確な数値が狂うので、自分の手でチューブを触って、パンパンに張っていれば実用に問題はありません。
テントの位置がずれないように、4隅のコーナーをペグダウンします。骨組みが無くてもエアチューブ・フレームで自立するので、風が気にならない時はこの作業をしなくても立ち上がりますが、断然作業がしやすくなります。
テントの立ち上げ
アウトウェルのスマートエアテントでは、「アドバンスド・エアチューブ・システム」が採用されています。これはすべてのエアチューブ・フレームとエアチューブ・ビーム(梁)が連結されていて、一カ所のバルブからのエア注入で、全体を一気に立ち上げられるというとても楽な仕様です。
さらに屋内の連結部分のバルブを閉じることで、一カ所だけがエア漏れしても全体へ影響しないようにすることもできます。
コンコード5SAには3つのエアチューブ・フレームがあるので、一番はじめに3つある「Air Out」のバルブを、3つとも「Open」から「Close」の位置に回して、エア抜きバルブを閉めます。
これでエア注入準備OKです。続けて「Air In」と書かれた場所にある、エア注入口のバルブのキャップを外してエアポンプのノズルを差し込み、エア注入を始めます。エア注入口は一方通行なので、手を休めてもエアが逃げてしまう心配はありません。
あとはひたすらポンピング。暑い季節の平地では、空気の膨張率が高いので、このサイズのテントで50回前後のポンピングで注入が終わります。「シュー」というエアが入っていく音がはっきりとする上、バルブ近くのエアチューブがムクムクと立ち上がってくれるので、「さあ膨らむぞ!」という手ごたえがあります。
この作業も楽されたい方は、電動ポンプを使えば、完全に手間いらずですが、ダブルアクションポンプで入れた方が早いのでオススメ。エアで立ち上がる最中にチューブが曲がっていたりする時は、少し幕体を引っ張ってエアを均等に通りやすくしてあげます。
この時は、一人だけだったのと、トムキャット5SATCよりも若干小さいサイズのチューブなので、集中してあっという間にエア注入が終わってしまいました。エア注入は5分かからずに終わり。さっさと次の作業に移れます。
一度設営すると、手で触った弾力で十分に入っているかが分かるようになります。日本人の繊細な感覚ならば、ゲージに頼らずこちらの方がいいかもしれません。
日差しが強い日だったので、日陰を作るためにさっさと脱着式オーニングをジッパーに合わせて取り付けます。一度取り付けると、仕舞う時は外さなくても大丈夫です。
オーニングを立てるためのU字型のポールをセットします。2本の足の間を狭めながら黒いスリングをポールの足元に装着します。
蛍光イエローのスリングをペグダウンしてオーニングを立てます。これで暑い日でも休みながらテント外での作業が可能に。
玄関ポールをセットして、周囲の必要な個所をペグダウンします。風対策のペグロープは蛍光イエローに配色されていて、暗い時間でもユーザーだけでなく歩行者にも見えやすくなっています。また、各種ペグはカラー分けされていて、非常に分かりやすくなっています。家族や仲間に手伝ってもらう時には「黒いペグは黒、黄色ペグは黄色」ってお願いすればいいだけなので、非常に分かりやすいです。玄関はメッシュドアが付いているので、メッシュにします。
雨混じりの蒸し暑い日だったので、室内へ雨が入らないように通気性を良くするために、オプションポールを使い玄関の対角線にある大窓を、巻き上げずに跳ねあげます。これでメッシュ→メッシュの風の通り道が出来ました。これで入居OK。
インテリアに移る前に、専用カーペットをリビングルームへセットします。
テントのインテリア
コンコード5SATCには、玄関、リビングルーム、2つのベッドルーム、そして開放式のオーニングがついています。「メッシュハウス」と呼ばれる3方全てがメッシュにできる仕様で、玄関および対角線にある大窓にはメッシュドア、フロント部分には大きなメッシュスクリーンが取り付けられています。さらにベッドルーム側にはメッシュベントが設けてあり、通気性を非常に良くしています。テントへの出入りは雨の日にも3ヶ所全てから行うことができます。
フロントをメッシュスクリーンにして、インテリア作業を進めます。
メインの出入り口となる玄関には、付属のフットプリントを付けることで、外の影響を受けない空間として使うことも、土間として使うこともできます。さらにメッシュバスケットが付いていて、部屋の中で使わないものを収納してから中へ出入りすることができます。
リビングルームはアウトウェルならではのパノラマルーム仕様。この日は撮影だったのでカーテン全開で、内装もセットしてリビング・ダイニングとして使いました。大人4人用のダイニングスペースとキッチンが収まる充分な広さです。
インナーテントで作られた、2つあるベッドルームの奥行は215cmと広く、180cm幅と140cm幅の2つのベッドルームはジッパーを開ければ連結して使えます。2つの別々のベッドルームとして使い分けたり・・・
一つのベッドルームにして、衣装ケースとイスを配置して、その広さを快適な空間作りに活用できます。
「外おうち」ならではの、着替えやすいクローゼットスペースなども作れます。
脱着式オーニングはフルに引き延ばすと奥行150cmの屋根付きの空間が作れます。リビングルームへの日差しを減らしたり、キッチンスペースやリラックススペースとして活用できます。5m x 5mの区画サイトにきっちり収める場合は、オーニングを縮めたり、取り外したりしておいて対応できます。
また、リビングルームとオーニングの間はドアで行き来できるので、一軒家でいえばテラス、マンションで言えばバルコニーの感覚で使い分けることができます。ちなみに玄関とリビングのすべての窓はジップアップカーテンが取り付けられており、完全に視界を遮ることでプライバシーを確保したり、窓からの放熱を最小限にして、寒い季節に対応できます。
窓はティント加工されているので、サングラスのように中を隠し、視線を気にすることなくくつろぐことができます。この日は私一人で設営と撮影だったので、ここで一息・・・フゥ・・・。
コンコード5SATCの外観。あれだけのスペースが中にあるのに、強風対策のためにエアロダイナミクスを考えてデザインされた外観は、意外と小さく見えます。このため、キャンプ場で妙に存在を主張しすぎることなく、品よく「外おうち」として立てることができます。
テントの拡張
ゲストの数が増える場合は、別売りオプションのパノラマオーニングを使うことで、全体の大きさを拡張することができます。これももちろん、エアチューブ式。パノラマオーニングへ家具を移して、空いたリビングルームをベッドルームとして利用することで、もう1家族が泊まることができます。
パノラマオーニングにも、専用のフットプリントが付属していますので、外の影響を受けない空間として使うこともできます。
まとめ
今回は、スマートエアテントの最高峰にあるスマートエア・テクニカルコットンシリーズのコンコード5SATCをご覧頂きました。トムキャット5SAと同じく、従来型のロッジテント・大型テントの短所をクリアーするだけでなく、そこで生まれた余裕を「スペースの拡張性」や「インテリアの充実」に活かしています。4人家族が快適に過ごすのに充分すぎる広さを持ちつつも、日本のキャンプ場のサイト面積でも柔軟に対応して設営できるので使い勝手も抜群です。
そして何より大型テントにも関わらず、一人で簡単に設営できる手軽さと暑い季節でも快適に過ごせるテクニカルコットン。スタンダードのスマートエアテントと比べると、やや上級者向けですが、その分、長い時間をテントでゆっくり過ごす際には他には変えられない快適さがあります。他のスチールフレームのコットンテントと比べると、設営し易さから、キャンプ頻度も高くなること間違いなし。
「外おうち」に完璧を求める方へは、強くおススメするモデルです。